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Column/代表コラム

Vol.41:【経営者、リーダー層向け】日本企業にとっての中東市場、中東ビジネスの密かな可能性

7/23/2025

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中東GCC諸国、変革の真っ只中にある成長市場

​日本では中東というと、盛んにマスメディアを中心に報道されているのは今でさえ紛争、戦争の類がほとんどで、それによる固定観念やイメージ化が勝手な優先順位の低下を招いているのが実態です。
ただそのイメージに引きずられ続けている日本企業の経営者やリーダー層は、いい加減に自分の手で、自分の足で、自分の目で、自分の頭でその中東という地域の経済的そして社会的なその実態や可能性、そして事業を企画していく、展開していく上での実現性を正確に評価、見極めていくことが求められています。
そしてその中東という地域がその周辺の重要な地域=インドやアフリカ圏などとどう実用的にそして戦略的に繋がっているのか、相乗効果や補完関係をどう築いてそして今後どうそれを進化させようとしているのか、も全体視点で捉えていくことが求められています。
 
日本企業の多くの経営者やリーダー層はそれらの認知さえまだしていませんが、現在中東、特にそのGCC諸国と言われる地域は今とてつもない変革期にあります。
近くで今だに爆弾で攻撃をし合っている某諸国とは違い、しかもその変革は極めて前向きなものです。
GCC諸国とは、湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council)に加盟している、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、オマーン、カタール、クウェートの6カ国のことです。
 
かつて「石油の恩恵に頼る富裕国家」といった一面的なイメージで語られがちだった中東・GCC(湾岸協力会議)諸国。だがいま、この6カ国は歴史的とも言えるスピードで、自国経済と社会の構造転換に向けた大変革を進めています。表面的な高層ビルの林立やイベントの派手さだけでは見えてこない、国家としての焦りと覚悟がこの地にはあります。
 
特に注目すべきは、脱炭素・脱石油を見据えた「ポストオイル時代」への国家戦略の本気度、そして同時に進む社会改革・規制緩和・国民マインドセットの再設計です。
それは日本企業にとって、単なる市場開拓先ではなく、「共に未来を創る余地のあるパートナー」としての中東を再認識させるほどの変化を伴っている、と言えます。
 
以下に、GCC主要6カ国の状況を簡単に概観してみます。
 
1. サウジアラビア:国家改造プロジェクト「ビジョン2030」
 
言うまでもなく、GCC最大のインパクトを持つのがサウジアラビアの「Vision 2030」です。ムハンマド皇太子の主導の下、国有石油会社アラムコの上場を皮切りに、観光(Red Sea Project、NEOM)、エンタメ(映画館の解禁、音楽フェスの解禁)、スポーツ(サッカーやゴルフへの巨額投資)とあらゆる分野での多角化が凄まじいスピードで進んでいます。
 
特筆すべきは、これが上からの変革で終わっていない点。
たとえば女性の運転解禁や雇用機会の増加、外資に対する規制緩和など、社会規範と制度の両面から国内の変革を促す仕組みが構築されています。
実際に首都リヤドでは、若い世代の価値観が急速に変化しており、国内市場におけるライフスタイルや消費行動の「脱・伝統」が始まっています。
 
日本企業も既に動いています。たとえばソフトバンクグループはサウジ政府系ファンドと共に巨額のVision Fundを設立、未来産業への投資を加速させています。
建設業界では日揮グローバルや東洋エンジニアリングなどが大型プロジェクトに参画。今後は観光・教育・スタートアップ支援等など、非資源分野でも日本企業の存在感が問われる局面が訪れています。
 
2. アラブ首長国連邦(UAE):ドバイだけではない、多軸化する未来都市国家
 
UAEはすでに中東におけるビジネス・物流・観光・金融のハブとして成熟しています。だが注目すべきは、同国が決して現状に満足せず、国家としての「第2成長曲線」を描こうとしている点です。
 
たとえばアブダビはAI・宇宙・量子コンピューティングといった先端分野に国家主導で投資。ドバイは「ドバイ・メトロポリス2050」を打ち出し、都市開発を継続しながら、スタートアップ支援やサステナブル観光に注力。
 
加えて、文化・教育・環境などのバランスに重点を置くシャルジャ首長国も注目に値します。ドバイやアブダビのような派手さはないものの、Sharjah Research, Technology and Innovation Park(SRTIP)などを中心に、先端製造業、ヘルスケア、環境技術、モビリティや物流のデジタルトランスフォーメーションなどなど、スタートアップ支援や大学発イノベーションの育成にも力を入れており、中小企業やアカデミアとの連携を志向する日本企業にとっては好適な足がかりとなりえます。
東海光学(メガネレンズメーカー。愛知県)は中東・アフリカ市場を見据え、シャルジャに新工場を設立しました。
 
日本からは、三菱商事がドバイにて水素・アンモニア関連の実証実験に参画、またパナソニックやシャープがUAEのエネルギー効率化プロジェクトに関与。ドバイ国際博覧会(Expo 2020 Dubai)での日本館の注目度も高く、文化的・技術的な親和性がUAE側にも広く認識されつつあります。
 
その他、GCC諸国の中では最も小規模ですが、バーレーンは近年、フィンテック分野での成長が著しい。
 
オマーンは派手な開発ではなく、持続可能性と地理的優位を活かした国家戦略を推進しています。特に港湾(ドゥクム港)開発や物流拠点整備が進み、インド洋との接続を重視した「海からの中東アクセス国」として存在感を増しています。
 
2022年のW杯開催国であるカタールは、世界最大級のLNG輸出国としての地位を保持しつつ、ソフトパワー投資に力を入れています。特に教育都市「Education City」には海外大学の分校が複数進出し、アラビア語圏における知のハブとして台頭しています。
 
クウェートはGCCの中で最も議会制度が機能しており、政治的対立によって改革のスピードは鈍化しています。しかしその一方で、民間セクターによるスタートアップ支援や教育改革が下から進行しているのも事実。
クウェート財団はAIやデジタル教育分野への出資を強化し、また国営石油会社が脱炭素投資に一部シフトし始めています。
日本企業では、日揮が石油精製プラントで長年パートナーとして活動しており、今後は脱炭素支援や技術移転の余地が拡大していくことが見込めます。
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「日本・シャルジャ投資フォーラム」にてInvest in Sharjah CEOとの対談風景(2025年6月18日/グランドハイアット東京)
問われる日本企業の経営者やリーダー層の「挑戦」とその「中長期視点での戦略的アプローチ」

そのような中東GCC諸国ですが、日本企業にとってはまだまだ新興国の中での優先順位として東南アジアやインドに比べると、新規事業、事業化を検討する段階に来ていないことがほとんどです。
地理的な要因、歴史的な経済連携の成熟度の低さ、情報の少なさ、紛争や戦争などのイメージ悪化要因、等など理由をあげようと思えば諸所あるわけですが、ここで声を大にして日本企業の経営者の皆様へ言いたいことの一つは、上記のような理由からの勝手な優先順位付けはあくまで自己都合だ、ということです。
自己都合によりなにも取り組まない間に、当然ですが時計の針は進み続けます。
​中東GCC諸国その各地の経済や市場、社会情勢とその状況、環境は日々変化しており、進展していきます。
当然ですが、明日行って明後日いきなりそこで盤石な基盤がその地で構築できるわけではありません。
時間はかかりコツコツではあれど、日々事業や経営を推進させていく中で、少しずつですがその競争力、提供する付加価値、コミュニティーからの信頼や信用が形作られていき、自社やその事業、経営の勝算どころが少しずつ見えてくるわけです。
安易な近道など存在しません。
 
同GCC諸国には、今まさにチャンスだと鼻息荒くアプローチしてきている外資系の企業とその経営者が、世界中から凄まじい数と勢いで同地を訪れています。
そして、重要成功要素や勘所を押さえたもしくはそれらを押さえた戦略的パートナーと共に、極めて戦略的に一歩一歩着実に日々積み上げているその経営者たちが世界中から集い、先行者としての利益や信用を築き始めているわけです。
 
そんな動向はどうでも良い、放っておけば良い、と考える日本企業の経営者やリーダー層は特に今も今後も考えたり、動いたりする必要性はないかと思いますが、自社の持つ特徴や性質、強み、事業環境、中長期潮流、目指す方向性、ビジョンやミッション等などを真摯に見つめ直したときに、この中東のGCC諸国との相性が非常に良いタイプの企業は、グローバルに見ても、実は日本にはものすごい数と質で存在することを私自身よく知っています。
インダストリーや市場領域の一例を挙げただけでも、先端製造業や工業、ヘルスケア、コンシューマー、環境技術、モビリティや物流のデジタルトランスフォーメーション、等など。
スタートアップ支援や大学発イノベーションの育成に力を入れているところ、地場SMEs(中堅、中小企業)の成長性、アカデミアとの連携、等など。
 
そして、端的にここでもう一つ触れたい要素としては、中東GCC諸国の地場企業の経営者やリーダー層が根底に持つ「持続可能性」に対する思想です。
中東GCC諸国の地場企業の経営者・リーダー層の多くは、持続可能性を「単なる環境配慮やSDGsのフレームワーク」ではなく、「世代を超えて継ぐ責任」や「国・地域社会の未来を形づくる使命」として捉えています。
これは、日本企業が長年培ってきた「中長期視点での経営」や「社会・地域との共生」「品質・信頼性を軸にした持続的成長」といった哲学と深い共鳴点があるように私自身は感じています。
 
GCC諸国では、特に家族経営の地場企業において、「次世代に何を遺すか」という思想が非常に強い。これは単に企業承継の話ではなく、国家づくりや社会貢献の延長線に企業活動を位置づけているという意味です。
 
同様に、日本の老舗企業や地方の中堅、中小企業の多くは、「自分の代だけの利益追求ではない」経営スタンスを持ち、信頼や持続性を価値とする文化を有しています。これは欧米的な短期収益志向とは異なるアプローチであり、中東の地場リーダー層から非常に高く評価されている点です。
 
故に、「短期的な案件受注」ではなく「ともに社会の未来を形づくるパートナー」としての関係構築がしやすい土壌がある、とも言えると私は見ています。
 
イスラム的価値観(ワクフ=信託制度など)や部族社会の伝統もあり、中東の経営者は“コミュニティ全体への影響”を経営の重要要素とする意識が強い。CSR(企業の社会的責任)やESGといった言葉以前から、地域社会への還元や文化保護を重視する価値観が根付いています。
これは、日本企業が持つ「地域密着型経営」や「本業を通じた社会貢献」といった発想と親和性が高い。
例えば、日本の中小企業が現地で技術教育や職業訓練に取り組む事例は、単なるCSRではなく“共創”として非常に高く評価されている点でもあります。
“社会の持続可能性”を共に構想・実装できる、日本独自の価値、がそこにはあるわけです。
 
GCC諸国では、石油依存脱却という国全体の構造転換に向けて、「事業は部分最適ではなく、国家・社会・人材の全体最適に資するものであるべき」といった思想がリーダー層に浸透してきています。
 
日本企業の持つ現場主義・全体設計力・長期的な事業育成力は、まさにこの思想と相乗効果を発揮し得る。たとえば、医療・教育・インフラなど「人と社会をつくる」分野での日本企業との協業は、短期成果以上の信頼構築を生んでいます。
“持続可能性=全体最適・根本解決”という思想的シンクロが起きている、とも言えるわけです。
 
日本企業の「静かだが、確かな中長期視点」「社会と共に歩む経営哲学」は、今、急速に変革を進める中東GCCの地場リーダーたちにとって、最も信頼に足る“共創パートナー”の一つとして映っています。
派手な進出や資金投下ではなく、“ともに未来を創る”覚悟と哲学のある事業が、深い共感と持続的な機会を生みます。
中東ビジネスは、静かですが確実に、日本企業にとっての「次の挑戦地」となりえます。
 
ただ現状はその現地のニーズに対して全く供給が足りていない、期待に応えられていない、期待を裏切っている状況。
これで良いはずはありません。
“部分的ではなく、全体的”。”表面的ではなく根本的”。”単発的ではなく持続的”、な本質的思考とアプローチをベースとした日本企業の経営者、リーダー層の「挑戦」、が一層求められています。
​
中東含めた新興国との事業や経営において、短期だけでなく、中長期的にも持続可能な成果を本気で目指したい。
そして、新興国と共に自らも、自社全体も成長していきたいと願う、願えるそんな経営者やリーダー層の方々へ。
​その実践的及び戦略的な推進/触媒/参謀役として共に歩むプロ伴走者、を必要とされている方は、お気軽にご相談ください。
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コラム執筆者:伊藤 弘幸

​​ワンブルーム株式会社 代表取締役
新興国(アジア:東南アジア+インドなど、中東、アフリカ)を主とした海外、グローバル事業や経営を、中長期的にも持続可能な成果へと導く、新興国ビジネス&マネジメントのプロ、トップアドバイザー、戦略的パートナー。
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​シャルジャ首長国(中東・アラブ首長国連邦、
UAE)の政府系投資促進機関トップが来日ー日本-シャルジャ投資フォーラムにて当社代表・伊藤とトークセッションを実施

2025年6月18日、UAE・シャルジャ首長国の政府系投資促進機関「Sharjah FDI Office(Invest in Sharjah)」のCEO、モハメド・アル・ムシャルク閣下が来日し、東京・グランドハイアットにて開催された「日本・シャルジャ投資フォーラム」に登壇。
日本企業の中東・GCC展開に向けたSharjahの活用可能性について、当社ワンブルーム株式会社 代表・伊藤弘幸と対談形式で戦略的対話を行いました。
Sharjahをハブとした日系企業の成功事例や、中小企業にとっての持続可能な進出モデルなどが語られました。
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​06/25/2025 :【プレスリリース】シャルジャ首長国(中東・アラブ首長国連邦、UAE)の政府系投資促進機関トップが来日ー日本-シャルジャ投資フォーラムにて当社代表・伊藤とトークセッションを実施
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​07/08/2025 :【Media】掲載メディアのご紹介|Selected Media Coverage
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第9回アフリカ開発会議(TICAD9)共創企業に認定

ワンブルーム株式会社は、来月2025年8月20日(水)~8月22日(金)横浜にて開催予定の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)に向けて、外務省TICAD事務局より『第9回アフリカ開発会議(TICAD9)共創企業』に認定されました。

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​05/30/2025:【Event】第9回アフリカ開発会議(TICAD9)共創企業に認定
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